その11 ボクは迷監督です

 <野球が好きなので、もちろん野球ゲームも大好きです。>

 
SRちゃんのソフトにはスポーツゲームも多々ありました。野球・テニス・ゴルフ・スキーなどメジャーな物から、「サマーゲームス」「ウィンターゲームス」などマニアックなソフトまであり、私は楽しんですべてやりこんでいました。
 特に野球ゲーム。埼玉にいながら大のカープファンであった私は、古くは「野球狂」にハマり、「プロ野球FAN」等リアルタイムな野球ゲームに時間が経つのも忘れ、何度も何度も選手達を酷使していました。また「新ベストナインプロ野球」や前述の「FAN」などは、当時のカープの選手データを使って、なるべく現実に近い形で遊んでもいました。
 
 ある時「Mr.プロ野球」というソフトを手に入れました。開発のクリスタルソフトは、あの「夢幻の心臓」のソフトハウスであり、「バビロン」「クリムゾン」などを遊んでいた私の中で一押しのブランドでしたので「どんな野球ゲームなんだろう」と期待でワクワクしながら起動させました。するとゲームを進めていった結果、何だか勝手に投げたり打ったりする模様。あわてて「ログイン」を引っ張りだすと、自分が監督になって優勝させる事が目標とのこと。
 
「何だか難しそうだなぁ」

 と思ったのもつかの間、やるほどに面白くなり、その日から私は監督業にどっぷりと浸かってしまったのでした。

広島カープでは何度も優勝し、他の球団で再プレイしたり、また選手の名前変更も出来るので、当時の部活の友達の名前や「三国志」の武将の名前にしたりして、
「なにやってんだよ、しばた〜」とか「ちょううん打てよ」とか一人で騒いでいたのも恥ずかしい過去です。

 そんなある日うちの親から一枚の写真を手渡されました。そこにはうちの母親と若いガタイの良い男性が写っていました。
「この選手知ってる?」
というので詳しく聞くと、この人はヤクルトの2軍選手で、うちの親がたまに行く飲み屋にコーチと2人で来ていたらしいんです。(うちは川口で当時近くの戸田にヤクルトの2軍の練習場がありました。)で、親がコーチと意気投合して色々な話をしていると

「コイツは絶対これから活躍するヤツだから、名前覚えておいてね」
と、その選手を紹介されたらしく、写真まで撮ってきたというわけでした。

私はさすがにヤクルトの2軍の選手の名前までは知らなかったので、「名前なんていうの?」と聞くと、

「池山っていう選手だって。」

と言うのです。早速「Mr.プロ野球」を起動させると、ショートで「いけやま」と言う名前の選手がいました!しかし「しぶい」の控えでレギュラーでは出ておりませんし能力もイマイチパッとしません。
 早速私は「ヤクルト」で始め直し、「いけやま」を1番ショートでに据えてペナントを開始しました。すると思っていたよりも打ってくれて、打線のつながりが出来た感じでした。結局、能力値以上の結果を出し、首位打者にもなってしまいました!
 
 現実の野球でも、背番号「36」の池山はその年の後半戦から1軍に昇格し、出場試合は少ないながらホームランを量産していって、来期に期待を持たせる感じでした。

 それからの池山選手の活躍は皆さんご存知の通り、背番号も「1」になり「ブンブン丸」という愛称までつくほどの名選手になりました。ゲームの世界ではその後も「いけやま」には何度もチームのピンチを助けられて、ゲームがキッカケで私がカープの選手以外に応援する選手の一人となったのです。

 その後、私はテレビで池山選手を見かける度に、
「私がショートのレギュラーに抜擢してやったから、ここまで活躍できたんだぞ!」
と一人でニンマリしていたのでした。(つづく)

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